がんの陽子線治療

(最終更新日:2020年03月13日)

がんには「手術療法」「抗がん剤療法」「ホルモン剤療法」「放射線療法」4つの治療法があります。
ここでは、放射線療法のひとつ「陽子線治療」を紹介します。

放射線治療とは

放射線治療とは、放射線をがん細胞に照射して、その細胞の成長と分裂を止め、がん細胞を壊すという治療法です。放射線にも種類があり、以下の方法があります。

電磁波:エックス線、ガンマ線など

粒子線:電子線、炭素線(重粒子線)、陽子線など

放射線治療は、手術のようにメスを入れて切るなどの痛みがないのが大きなメリットといわれています。

しかし、一方で、がん細胞の周囲の正常な細胞も放射線で損傷を受けてしまうことから、場合によって、吐き気などの体調不良や体力低下、抜け毛などの副作用が起こります。

[監修:公益財団法人 朝日生命成人病研究所]

 

陽子線治療は身体の負荷が少ない

陽子線治療とは、がん細胞だけをターゲットに効果的に照射することで、通常の放射線治療よりも周囲の正常な細胞の損傷を抑えることができる治療法です。

陽子線治療では、水素の原子核(陽子)を非常に高い速度まで加速して、がん細胞へ照射します。

普通のエックス線と違うのは、陽子線が体の中に入ると、ある一定の深さで止まり、停止する直前に放射線の量が非常に多くなる点です。

それによって、周囲の細胞への影響を極力抑え、がん細胞に効果的に照射することができます。

患者は、照射時間を含めて1日平均20分前後の治療を平均20回程度、2週間にわたって受けるのが一般的です。痛みはほとんどなく、身体の負荷は非常に少ない治療法といえます。

[監修:公益財団法人 朝日生命成人病研究所]

 

陽子線治療を受けることができるのは限られたケース

陽子線治療は前述の通り、患者への負担も少なく、効果的な治療なのですが、様々な理由で受けられるケースは限られています。

 

(1)健康保険の適用対象外

陽子線治療は先進医療の一つです。
先進医療とは、一般の保険診療で認められている医療の水準を超えた最新の技術として厚生労働省が定めた高度な治療のことで、先進医療にかかる費用は全額自己負担になってしまいます。
陽子線治療の平均的な費用は250万~300万といわれています。

 

(2)限られた病院でしか実施できない

陽子線治療には、非常に複雑かつ巨大な装置・施設が必要です。
現在日本で、陽子線治療を受けられる病院は全国で10病院(北海道・福島・茨城・千葉・長野・静岡・愛知・福井・兵庫・鹿児島)に限られています(2015年5月現在)。

 

(3)局所的な治療ができるがんのみ

陽子線治療が有効なのは、局所的な治療ができるがんに限られるといわれています。
転移してがん細胞が広がってしまっている場合や血液のがんの場合は、別の治療法が検討されます。

 

まとめると

・陽子線治療は通常の放射線治療よりも周囲の正常な細胞の損傷を抑えることができる治療法です。
・陽子線治療は先進医療のひとつで、費用負担が大きいことや実施できる病院が少ないことから受けられるケースは限られています。

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