つみたてNISAのメリット・デメリット
(最終更新日:2024年03月15日)
目次
つみたてNISAとは
つみたてNISAとは、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。
通常、投資信託等の金融商品に投資した場合、値上がりによる売却したときの利益や受け取った配当に対して約20%の税金が掛かります。
つみたてNISAの場合、「つみたてNISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかかりません。
つみたてNISAの対象商品は、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、投資初心者をはじめ幅広い年代の方にとって利用しやすい仕組みとなっています。
但し、運用成果によっては、元本割れしてしまうこともありますので、注意が必要です。
つみたてNISAの概要
利用できる方 | 日本にお住まいの20歳以上の方(*1) ただし、NISAとつみたてNISAはどちらか一方を選択して利用可能 |
---|---|
口座開設可能数 | 1人1口座(*2) |
金融機関の変更 | 年単位であれば可能 |
新規に投資できる期間 | 20年間(2018年~2037年) |
投資対象商品 | 金融庁が定めた基準を満たすETF、投資信託 |
投資方法 | 定期かつ継続的な方法による積立のみ |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年40万円が上限(*3)、同時に保有できる非課税投資枠は最大800万円 |
非課税期間 | 投資した年から最長20年間 |
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 |
資産の引き出し | いつでも引き出せる |
損益通算 | できない |
*1 …口座を開設する年の1月1日現在
*2 …NISA口座を開設する金融機関は1年単位で変更可能です。また、NISA口座内で、つみたてNISAと一般NISAを1年単位で変更することも可能です。ただし、つみたてNISAですでに投資信託を購入している場合、その年は他の金融機関又は一般NISAに変更することはできません。
*3 …未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできません。
出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト つみたてNISAの概要
つみたてNISAのメリット 運用益が非課税
つみたてNISAには、新規投資額で毎年上限40万円、累計投資額で最大800万円までの非課税投資枠内で購入した金融商品については、「①値上がりによる利益、②配当金など、が購入した年から数えて20年間は課税されない」というメリットがあります。
①値上がりによる利益(譲渡益)が非課税
購入した株式・投資信託が値上がりした後に売却した場合、通常であれば、値上がりによる利益(譲渡益)に対して約20%(復興特別所得税を含めると20.315%)の課税となります。
それが、NISAの非課税投資枠内で購入した金融商品で、20年間の非課税期間内であれば、非課税になります。
②配当金などが非課税
購入した株式・投資信託を保有している間に配当金などを受け取った場合、通常であれば、配当金などに対して約20%(復興特別所得税を含めると20.315%)の課税となります。
それが、NISAの非課税投資枠内で購入した金融商品で、20年間の非課税期間内であれば、非課税になります。
つみたてNISAのデメリット① 損益通算ができない
つみたてNISAにはデメリットもあります。それは他の口座との損益通算ができないと言うことです。
損益通算とは?
損益通算とは、株式取引等においての利益と損失を相殺することです。
株式取引等で利益(譲渡益や配当など)を得ると、税金がかかりますが、損失と相殺することで税金を少なくすることができます。
一般口座や特定口座どうしであれば損益通算可能
通常、つみたてNISA口座以外の口座(一般口座や特定口座)どうしで譲渡益と譲渡損が出た場合、相殺することができます。
例:特定口座どうしで損益通算可能
上記の例では、ある特定口座で40万円の譲渡益を出すことができました。
本来ならば、この40万円に約20%の税金がかかるのですが、別の特定口座で40万円の譲渡損が出ているため、譲渡益と相殺されて、課税がなくなります。
つみたてNISA口座以外の口座(一般口座や特定口座)とつみたてNISA口座は損益通算できない
次に特定口座で譲渡益40万円、とつみたてNISA口座で譲渡損40万円が出た場合をみてみましょう。
例:特定口座とNISA口座は損益通算できない
特定口座とつみたてNISA口座は損益通算できないので、実質の損益は±0円にもかかわらず、特定口座の譲渡益40万円に約20%の税金がかかってしまいます。
つみたてNISAは「利益がでれば恩恵が大きいが、損失が出た場合には厳しい制度」とも言えます。
つみたてNISAのデメリット② 個別銘柄に投資できない
一般のNISAであれば個別の企業銘柄(日本株はもちろん海外株式も可能)やREITなども投資可能ですが、つみたてNISAの対象となる商品は「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」のみとなります。
例えば公募株式投資信託の場合、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・販売手数料はゼロ(ノーロード)
・信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定
・顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること
・信託契約期間が無期限または20年以上であること
・分配頻度が毎月でないこと
・ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
参考:NISAの対象となる金融商品
NISAで取引できる金融商品は、投資信託、国内・海外上場株式、国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)、国内・海外REIT、新株予約権付社債(ワラント債)です。
つみたてNISAとNISA 投資できる金融商品の比較
つみたてNISAの非課税投資枠とは?
毎年40万円、最大800万円が非課税で投資・保有できる
つみたてNISA口座では、非課税投資枠というものがあり、毎年40万円分の金融商品(投資信託など)が購入可能です。
非課税で保有できる投資総額は最大800万円となります。
非課税期間の20年間が終了したときは?
非課税期間の20年間が終了したときには、NISA口座以外の課税口座(一般口座や特定口座)に払い出されます。なお、つみたてNISAでは、翌年の非課税投資枠に移すこと(ロールオーバー)はできません。
現在、つみたてNISAは2037年までの制度とされていますので、投資信託の購入を行うことができるのは2037年までです。
2037年中に購入した投資信託についても20年間(2056年まで)非課税で保有することができます。
出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト つみたてNISAの概要
つみたてNISAのはじめ方
(1)つみたてNISA口座を開設する金融機関を選ぶ
つみたてNISAは、証券会社、銀行、信託銀行、投信会社、郵便局、農協、信用金庫、信用組合、労働金庫、生命保険会社など、様々な金融機関で取り扱いがあります。
金融機関の選び方
金融機関を選ぶポイントとしては、
・買付や売却の手数料(ネット系は手数料が安い傾向)
・取扱い投資信託の商品数
・店舗でのサポートがあるか
などについてウェブサイト等で確認して選んでいきましょう。
(2)つみたてNISA口座開設の流れ
①金融機関からつみたてNISA口座開設書類を入手
②金融機関に書類を提出
③金融機関から申請結果の連絡
④つみたてNISA口座開設完了→つみたてNISA口座での取引開始
申込から取引開始まで2〜3週間程度かかります。
NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの比較
NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの比較
NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
---|---|---|---|
利用できる方 | 日本在住の20歳以上の方 | 日本在住の0歳~19歳の方 | |
口座開設可能数 | 1人1口座 | ||
金融機関の変更 | 年単位であれば可能 | 現在の口座を廃止すれば可能。ただ、口座を廃止すると、過去の利益に課税される。 | |
新規に投資できる期間 | 10年間(2014年~2023年) | 20年間(2018年~2037年) | 2016年~2023年 |
投資対象商品 | 上場株式・ETF・REIT・投資信託など | 一定基準を満たすETF、投資信託 | 上場株式・ETF・REIT・投資信託など |
投資方法 | 一括買付、積立 | 定期かつ継続的な積立 | 一括買付、積立 |
非課税投資枠 | 新規投資額で年120万円上限 最大600万円 | 新規投資額で年40万円上限 最大800万円 | 新規投資額で年80万円上限 |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長20年間 | 最長5年間 |
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 | ||
資産の引き出し | いつでも引き出せる | 18歳まで払出し制限あり | |
損益通算 | できない | ||
運用管理者 | 口座開設者本人 | 口座開設者本人の両親・祖父母等 |
NISA、ジュニアNISAについてはこちら
NISAとつみたてNISA、どちらがいい?
まず、NISAとつみたてNISAは同時に利用できませんので、どちらかを選ぶ必要があります。
それぞれの特徴は下記の通りです。
NISA:投資信託だけでなく、個別銘柄にも投資が可能/非課税投資上限は年120万/累計非課税枠600万円
つみたてNISA:投資信託のみ投資可能/非課税投資上限は年40万/累計非課税枠は800万円
年間40万円以上を積み立てたい方や個別銘柄に投資したい方はNISAを選ぶと良いでしょう。
上記以外の方で毎月こつこつ積立ができる場合には累計非課税枠の大きいつみたてNISAを活用すると良いでしょう。
つみたてNISAの注意点
口座開設
・NISA口座は、1人1口座に限り開設できます。ただし、NISA口座内で、つみたてNISA又は一般NISAのどちらか一方を選択する必要があります。
・金融機関の変更は可能です。ただし、変更しようとする年の9月末までに、金融機関で変更の手続きを完了する必要があります。また、その年に既にNISA口座内で金融商品の購入をしていた場合には、変更できるのは翌年の投資分からです。
・金融機関の変更をした場合には、変更前の金融機関のNISA口座では、追加の金融商品の購入ができなくなりますのでご注意ください。
・また、年単位でつみたてNISAと一般NISAを変更することも可能です。原則として、変更しようとする年の前年の10月から12月の間に、金融機関で変更の手続きを完了する必要があります。
非課税投資枠
・つみたてNISAで購入できる金額(非課税投資枠)は年間40万円までです。
・その年の非課税投資枠の未使用分があっても、翌年以降に繰り越すことはできません。
口座間移動・損益通算
・NISA口座で保有している投資信託が値下がりした後に売却するなどして損失が出た場合でも、他の口座(一般口座や特定口座)で保有している金融商品の配当金や売却によって得た利益との相殺(損益通算)はできません。
・現在、NISA口座以外の口座で保有している金融商品をNISA口座に移すことはできません。また、NISA口座で保有している金融商品を、他の金融機関のNISA口座に移すこともできません。
非課税の対象となる配当金・分配金
ETFの分配金は、証券会社を通じて受け取る場合(株式数比例配分方式を選択している場合)のみ非課税となります。
分配金再投資とスイッチング
NISA口座で収益分配金の再投資やスイッチングを行う場合、その分の非課税投資枠が必要です。収益分配金の再投資やスイッチングは、新規購入の場合と同様に非課税投資枠を利用します。
そのため、その年の非課税投資枠(つみたてNISAの場合は40万円)を使い切っている場合、NISA口座内での収益分配金の再投資やスイッチングはできません。
特別分配金の取扱い
投資信託の分配金のうち、元本払戻金(特別分配金)は元本の払い戻しに相当し、利益として受け取るものではないことから、課税口座(特定口座や一般口座)においても、そもそも非課税であり、NISAの非課税のメリットを享受できません。