個人年金保険は個人年金保険料控除を考慮すると「年間利回り」10%以上?

(最終更新日:2020年10月03日)

近年の低金利の影響で円建て個人年金保険はもとより、米ドル建ての個人年金保険も魅力が薄れているのは確かです。
ですが、生命保険料控除の一種である個人年金保険料控除を活用した税金軽減効果を加味すれば、iDeCoやNISAなどの様々な税制優遇が受けられる金融商品と並んで、資産形成の効果が高いと言えます。

個人年金保険とは

老後の生活資金の積立を目的とした保険です。

公的年金制度で不足する部分をカバーする目的で加入するのが一般的です。

 

個人年金保険のしくみ

保険料払込期間に年金原資を積み立て、年金受取期間になると所定の年金受取が開始します。

保険料払込期間中に死亡した場合は、既払込保険料相当額が遺族に支払われます。

死亡時よりも生存時の保障を重視した保険と言えます。

個人年金保険01

 

個人年金保険の資産形成効果は?

近年の低金利の影響で円建て個人年金保険はもとより、米ドル建ての個人年金保険も魅力が薄れているのは確かです。

ですが、生命保険料控除の一種である個人年金保険料控除を活用した税金軽減効果を加味すれば、iDeCoやNISAなどの様々な税制優遇が受けられる金融商品と並んで、資産形成の効果が高いと言えます。

 

 

 

生命保険料控除とは

ではまず、生命保険料控除がどういった制度なのか解説します。

生命保険料控除とは1年間の払い込んだ保険料に応じて一定の金額がその年の課税所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担が軽減される制度です。

生命保険料控除の概要

生命保険料控除

 

生命保険料控除は、生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類に分けられます。

それぞれの年間保険料に対する控除金額は下記の通りです。

生命保険料控除

新契約(平成24年1月1日以降締結の保険契約)の場合

 所得税住民税
年間払込み保険料控除される金額年間払込み保険料控除される金額

新生命保険料控除

介護生命保険料控除

新個人年金保険料控除

20,000円以下払込保険料全額12,000円以下払込保険料全額
20,000円超

40,000円以下

(払込保険料×1/2)

+10,000円

12,000円超

32,000円以下

(払込保険料×1/2)

+6,000円

40,000円超

80,000円以下

(払込保険料×1/4)

+20,000円

32,000円超

56,000円以下

(払込保険料×1/4)

+14,000円

80,000円超一律40,000円56,000円超一律28,000円

(出典)国税庁 No.1140 生命保険料控除

(出典)東京都主税局 個人住民税 7個人住民税の所得控除

個人年金保険料控除の上限控除額は所得税で4万円、住民税で2.8万円なります。

参考:【生命保険料控除】実際の税金軽減額はいくら?所得税、住民税が軽減される3つの制度をFPが解説

 

 

個人年金保険料控除を受けた場合の税金の軽減額は?

では、実際の税金の軽減額はいくらになるのでしょうか。ここでは、平成24年以降の「新制度」において個人年金保険料控除の上限額で控除を受けた場合(年間保険料8万円以上、所得税4万円、住民税2.8万円の保険料控除)の税金の軽減額の例をみていきましょう。

 

個人年金保険料控除を受けた場合の税金の軽減額の例

(所得税4万円、住民税2.8万円の保険料控除を受けた場合)

家族構成年収所得税軽減額住民税軽減額軽減額合計
単身世帯400万¥2,000¥2,800¥4,800
600万¥4,000¥2,800¥6,800
800万¥8,000¥2,800¥10,800
夫婦のみ600万¥4,000¥2,800¥6,800
800万¥8,000¥2,800¥10,800
1,000万¥8,000¥2,800¥10,800
夫婦と子ども2人600万¥2,000¥2,800¥4,800
800万¥4,000¥2,800¥6,800
1,000万¥8,000¥2,800¥10,800

※夫婦はいずれか一人が年収を得ている前提です。子どもは大学生と16歳以上の高校生としています。
※平成24年以降の「新制度」での軽減額の例です
※本表の金額はあくまで一例であり、目安とお考えください。個別の税金の詳細については税務署や税理士等の専門家にご確認ください。

 

 

 

個人年金保険料控除の最大活用で30万の税軽減/「年利」10%超も

たとえば年間保険料10万円で年間10,800円の税金負担の軽減があったとします。

仮に保険料の払込期間が30年とした場合、税負担軽減額の総合計は324,000円と大きな金額になります。

また、税金軽減額を「利回り」と考えてみると、年利回り10.8%となります。

つまり、個人年金保険の商品自体の運用利率(≒予定利率・・・円建て:0.5%〜1.5%程度、米ドル建て:1.5%〜2.5%程度)に、個人年金保険料控除による税負担軽減も加わりますので、一般の預貯金や税軽減のない金融商品に比べ、資産形成の効率を高めることができます。

 

ただし、下記の個人年金保険のデメリットもあります。

・途中引き出しが原則不可(契約者貸付が利用できても利息がかかる)

・途中解約の場合、解約返戻金が払込保険料を下回る場合がある

長期にわたって手をつけることのない余裕資金で保険加入を行うことが大切です。

 

 

個人年金保険料控除の適用率が低い

このように、資産形成効果が高い個人年金保険ですが、活用している方はまだまだ少ないのが実態です。

下記のグラフは、給与所得者数に占める各保険料控除(生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除)の適用割合を示したものです。

給与所得者数に占める各保険料控除の適用割合

保険料控除の適用割合

 

(出典):国税庁「平成30年民間給与実態統計調査」より納税者を対象として筆者算出

個人年金保険料控除を適用されている割合は19.3%とかなり低いことがわかります。

ということは、多くの方が個人年金保険料控除の活用(個人年金保険で税負担を減らしながら老後に向けた資産形成)の余地があるということです。

 

 

 

資産形成のためには複数の商品を組み合わせて

本記事では個人年金保険を紹介しましたが、資産形成のためには様々な商品を組み合わせてリスクを減らすことが有効です。

また、iDeCoやNISAなどの他の税優遇がある商品も活用も欠かせません。

 

iDeCoやNISAなども含めた各種税金軽減制度は下記の記事で解説しています。

参考:資産形成に役立つ税金軽減制度(保険料控除/住宅ローン控除/ふるさと納税/iDeCo/NISA)

 

 

 

個人年金保険料控除を利用するための要件

なお、個人年金保険料控除を利用するためには、以下のすべての条件を満たし「個人年金保険料税制適格特約」が付いている個人年金保険である必要があります。

  • 年金受取人が契約者か、またはその配偶者であること
  • 年金受取人が被保険者と同一人であること
  • 保険料の払込期間が10年以上であること(一時払いは不可)
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始日に被保険者の年齢が60歳以上であること、かつ受取期間が10年以上であること

 

<注意>

保険料の全額を契約時に支払う「一時払い個人年金保険」や、受取額が変動する「変動個人年金保険」は対象となりません。

個人年金保険料控除の対象とならない保険については、「一般生命保険料控除」の対象になります。

 

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