自転車保険加入義務化!対象地域は?自転車保険以外でも大丈夫って本当?
(最終更新日:2024年03月15日)
・自転車事故により重大なけがや損害に結びついたり、莫大な損害賠償費用を請求されたりといったケースがあります。
・一部の自治体では、自転車保険への加入を条例で義務付ける動きが広がりつつあります。
・自転車保険加入義務化の地域の方がどのような保険に加入しておく必要があるのかご紹介します。
目次
自転車保険加入義務化の背景
近年、自転車事故により重大なけがや損害に結びついたり、莫大な損害賠償費用を請求されたりといったケースが報道され、自転車事故の危険性などが改めて認識されるようになってきました。
自転車事故を起こしてしまったときに、何も保険に入っていなければ、請求された高額な賠償費用(場合によっては数千万円になることも)を払うことができないかもしれません。
自転車事故での高額賠償事例
事故の概要 | 判決認容額※ |
---|---|
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決) | 9,521万円 |
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決) | 9,266万円 |
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道 を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決) | 6,779万円 |
男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決) | 5,438万円 |
男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を歩行中の女性(75歳)に衝突。女性は脳挫傷等で5日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成26(2014)年1月28日判決) | 4,746万円 |
※判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、 加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。
このような状況を受け、自転車事故の際の「被害者の保護」と「加害者の経済的負担軽減」のために、2015年10月に兵庫県で自転車保険の加入が義務化されて以降、全国の自治体で自転車保険への加入を条例で義務付ける動きが広がりつつあります。
自転車保険の加入 義務化地域
※クリックすると自治体のページにジャンプします
2020年7月現在 保険相談サロンFLP調べ
自転車保険の加入 努力義務化地域
※クリックすると自治体のページにジャンプします
2020年7月現在 保険相談サロンFLP調べ
今後も同じような条例が他の自治体でも制定されて、自転車の保険加入義務化の動きは広まっていく可能性があります。
加入義務がある保険とは?
加入義務化されている地域の方はどのような保険に加入する必要があるのでしょうか?
下記の2つのポイントでみていきましょう。
(1)対象者
(2)保険の内容
(1)自転車保険の対象者
自転車保険に加入する義務がある人は、自転車保険加入義務化地域内で自転車を利用する人全てです。
他の地域に住民票があるとか、条例施行前に購入した自転車であるなどといった事情は、一切関係ありません。
また、自転車を利用する人が未成年者の場合は未成年者の保護者に加入義務があります。
(2)保険の内容
加入義務があるのは、自転車で事故を起こした場合に、それによって生じた他人の生命または身体の損害を填補することができる保険です。
つまり、対人賠償保険への加入が義務付けられています。
よって、対物賠償保険や自身のケガへの補償への加入は任意ということとなります。
具体的にどんな保険に加入すればいい?自転車保険でなくてもOK?
自転車保険義務化によって義務付けられている最低限の部分は、自転車事故を起こした際の対人賠償が備えられていればいいわけです。
具体的にどのような保険に加入しておけばいいのでしょうか?
自転車保険
自転車事故、自転車事故以外の事故による
・対人賠償(義務化されている補償はここ)
・対物賠償
・死亡保障
・入院、手術保障
がセットになっているものが一般的です。
実は、「自転車保険」以外にも、自転車事故における対人賠償の補償を備えた保険であれば、大丈夫です。
例えば、下記のような商品、加入方法があります。
自動車保険・火災保険・傷害保険に日常生活賠償特約(個人賠償特約)を付帯
日常生活賠償特約(個人賠償特約)とは、日本国内で他人にケガをさせたり、 他人の財物を壊したりして、法律上の損害賠償責任(業務遂行に直接起因 するものを除きます)を負った場合に補償するものです。
対人賠償、対物賠償が基本ですが、訴訟費用が補償されるものもあります。
・自動車保険(自動車事故の際の対人補償、対物補償、車両補償など)
・火災保険(災害による自宅の損害の補償など)
・傷害保険(ケガをした時の死亡・後遺障害・入院・手術・通院の補償)
に日常生活賠償特約(個人賠償特約)を付帯することで、自転車事故を含む事故における対人賠償の補償を備えることができます。
個人賠償責任保険
上記で紹介した「日常生活賠償特約(個人賠償特約)」が単体の保険商品となっている商品です。
日本国内で他人にケガをさせたり、 他人の財物を壊したりして、法律上の 損害賠償責任(業務遂行に直接起因 するものを除きます)を負った場合に補償するものです。
対人賠償、対物賠償が基本ですが、訴訟費用が補償されるものもあります。
その他、日常生活賠償特約(個人賠償特約)もしくは個人賠償責任保険を付帯できる保険など
他にも
・クレジットカード会員が自動加入する保険
・全労済、JA(農協)共済、コープ共済、都道府県民共済 など
・会社等の団体保険、PTAの保険 など
にオプションで付帯することができる場合があります。
TSマーク付帯保険
TSマーク付帯保険とは、自転車安全整備士が自転車を点検整備した際に貼付されるTSマークに傷害保険と賠償責任保険が付いているというものです。
主な特徴は下記の通りです。
・自転車に保険がかけられているため、その自転車に誰が乗っても補償されます
・加入するには、自転車安全整備店で自転車安全整備士の方に自転車を点検・整備してもらう必要があります
・料金の目安は、年間1500円~2000円程度ですが、自転車の状態によって点検整備にかかる費用が異なります
・赤色TSマーク、青色TSマークの2種類があり、補償内容が異なります
青色TSマーク | 赤色TSマーク | |
---|---|---|
賠償責任補償 | 1,000万円 | 1億円 |
傷害補償 入院(15日以上 | 1万円 | 10万円 |
傷害補償 死亡若しくは重度後遺障害(1~4級) | 30万円 | 100万円 |
被害者見舞金 | なし | 10万円 |
自転車保険加入のポイント①補償の範囲は誰か?
普段自転車に乗り、補償したいひとが被保険者となっているか必ず確認しましょう。
一般的に個人賠償責任特約の被保険者(補償の対象となるひと)の範囲は下記の通りです。
<被保険者の範囲>
(1) 記名被保険者
(2) (1)の配偶者
(3) (1)または(2)の同居のご親族
(4) (1)または(2)の別居の未婚のお子さま
契約によっては「本人のみ」という契約もありますので注意が必要です。
自転車保険加入のポイント②対人賠償の限度額はいくらか?
ここで注意いただきたいのが対人賠償の限度額がいくらか、ということです。商品によって対人賠償の限度額1億円というものがあります。
一方、自転車事故の対人賠償は数千万円、時には1億円を超えることもあります。
高額の賠償に備えるため、対人賠償の限度額3億円、または無制限などといったプランを選ぶこともできます。
自転車保険加入のポイント③示談交渉サービス付きかどうか?
「示談」とは、事故の加害者と被害者が話し合いによって事故の問題を解決することです。
自転車事故で相手をケガさせてしまったり、相手のモノを壊してしまったりしたとき、「損害賠償額」や「支払い方法」をお互いが合意できるよう話し合うことです。
「示談交渉サービス」とは、保険会社が本人に代わって相手方と示談交渉を行ってくれるサービスです。
示談交渉サービスのメリット
・事故に関する知識が豊富な専任担当者が対応しますので、 本人が対応するよりも交渉がスムーズになります。
・相手の方と直接示談する負担から解放され、 事故後の不安や精神的なストレスが軽減されます。
示談交渉の流れとは?
示談交渉では、事故による損害を確認し、損害を元通りにするための費用を確定させ、支払う金額を決め、最終的に解決の書類を作成するまで行います。
損害は「人のケガ」と「モノの破損」の2種類に分けられます。ケガの場合について示談交渉でやってくれることを具体的にご説明します。
・損害の確認
ケガの場合には、ケガの程度と治療費用を確認し、ケガが完治するのにいくらかかるか調べます。また、治療費用以外にも、ケガによる「慰謝料」、病院へ通院するための「交通費」、通院中に仕事ができなかった場合の「休業損害」、などどんな損害が発生しているか、損害額はいくらかを調べます。
支払うためには費用を証明する必要であるため、被害者の「診断書」「治療費の領収書」などの証拠となる書類の取り付けも行います。
・示談交渉
交通事故の場合、加害者に一方的な過失があるケースもありますが、被害者側にもある程度過失が発生するケースもあります。場合によっては被害者に対して全額賠償するのではなく、相手の過失分を差し引いて一部を支払うことがあります。
事故の形態によって、過去の裁判例を基にして損害額のうちどれくらいを支払うのかを交渉します。
・示談書の取り付け
ケガの治療が終わると、示談交渉によって決めた金額と支払い方法を書面にした「示談書」を作成します。「示談書」に加害者と被害者双方で署名捺印をします。事故の当事者は示談書を解決の証として保管しておきます。
・賠償金の支払い
示談が成立すると示談書で決められた金額を相手方へ支払うことになります。保険を使用する場合には、保険会社から被害者側へ直接賠償金が支払われます。
・示談が成立しなかったら?
損害額の認定に納得ができない、差し引かれる過失分に納得がいかない、など示談が成立しなかった場合、訴訟を起こし裁判で争われる場合もあります。
上記の専門的で大変な負担をプロが代行してくれるわけなので、「示談交渉サービス」はぜひ加入しておきたい補償といえるでしょう。
まずはご自身の補償内容を確認しよう
自転車保険の義務化に伴って必ずしも自転車保険に加入しなければならないわけではありません。すでに自転車事故の補償ができる保険に加入している可能性もあります。
ただ、それぞれの契約によって補償内容が違いますので、しっかりと確認する必要があります。
例えば、傷害保険に加入していても、日常生活賠償特約(個人賠償特約)が付帯されていなければ、自転車保険義務化における必要な補償を備えていないことになりますので、注意が必要です。
今一度、ご自身が加入されている保険の内容を確認されることをおすすめします。